ここからは国道377号から県道2号に入り、まず懐かしい10番・切幡寺をめざし、
そこから逆にたどり1番に向かう42キロほどの行程だ。

昨夜同宿の三人は、一気に向かうと言い、早発ちした我々を途中道で足早に追い
越して行った。
無理をしない我々の足は一泊二日の行程で、途中旧土成町に宿を取っている。

歩き遍路を始めた頃は、ただがむしゃらに一日40キロを歩いたことも有った。
しかし道中で、「山はうごかない。ゆっくり進めばいい」と教えてくれた先達に出会っ
てからは、「無理はしないで歩きを楽しもう」と考えも変わった。

道中でのお接待に甘え、出会いを楽しみ、門前の美味いものに舌鼓を打ち、宿
での遍路談義に花を咲かせ、こうして苦しい歩みの中に楽しさをも見つけながら、
ここまで歩いて来た。

『歩くと言う事は無心になること。静かに己の心を調え、物事をありのままに捉
える。心が静まれば、自分と他人を区別して利益を求めることは無意味になり、得
失や、若いこと、老いること、汚れや、清らかであることに拘らなくなる』と歩き遍路
の効用を説いている。

そして歩くことは何より人を素直にする。
素直になれば邪心も無く、他者を容易に受け入れることが出来る。
それが行った先々で、多くの人々との出会いをもたらしてくれた。

この日6時間ほど歩いて2時過ぎに早々と宿に入った。
ここの宿は夕食が付いていない。近くに食べるところが無くは無いが、面倒なので
すぐ前のコンビニで適当に見繕ったものを持ち帰り、宿の食堂で食べている時その
女性と知り合った。(続)
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